闇に消えた怪人 |
著者:一橋文哉 発行:新潮社 価格:1,600円 |
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グリコ森永事件関連の本が二冊ダブってしまうので申し訳なさそうに最後尾に追いやられてしまったが、事件がその後どうなったかを知りたい人には必読の本だ。著者独自の推理によって犯人像の可能性を追求し、ついには主犯の人物特定まで辿りついたという主観に満ちた記者魂の根性だけが光っている。
事件の裏側に見え隠れするある人物と、あらゆる仮説を立て手当たり次第に潰していった苦難の取材捜査にはまことにご苦労さんとしかいいようがないが、結局スクープにできなかったんだから話しにならない。所詮「かい人21面相」は推測や努力や証拠で潰していけるような単純なタマではないんである。彼らはもっとシュールでもっと根拠のないカオスティックな存在なはずであってほしい。力づくの捜査の前に浮かびあがる彼らの人物像などは所詮理屈に惑わされた論理的な事実関係上の接点でしかなく、周到という言葉とはほど遠いバカでなにも考えていないパッパラパーな集団の仕業とは考えられない頑なな捜査方針こそがこの事件を迷宮入り導いた主因ではなかろうか。 |
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なし |
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1997/04 putdown |