破滅 |
著者:毎日新聞社会部 発行:晩聲社 価格:1,200円 |
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昭和54年1月26日、大阪の三菱銀行北畠支店に猟銃を持った男が現金を要求。警察に通報しようとした行員や駆けつけた警察官などを次々と射殺して、42時間に渡る篭城を決め込んだ梅川昭美。踏み込んだ警官に狙撃されるまでの30年間の生い立ちが綴られている。 監禁した女子行員を全裸にして人垣をバリケードにしたり、倒れた行員の耳をナイフで同僚に削がせたりと、狂気かつサディスティックな事件でもあるので梅川の人間性に興味をそそられて読んでみたけど、意外や意外。生い立ちや性格を知れば知るほどチンケで救いようのないヤサ男だったことがわかる。こうした犯罪者には、表層にないトラウマがあったりなんらかのドラマがあったりするものだけど、残念ながらこの男にはそんな逸話はなにひとつないようだ。 見栄っ張りでキザでカッコをつけるが芯がない。強い者に弱く、弱い者に強い。社会に対応できず、ヤクザにすらなれないチンピラ。死ぬまでとうとう見栄を張り通した哀れな三十男の終焉がそこにあるだけだった。 |
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見栄は劣等感の裏返しである。 |
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1997/10 putdown |